大使の新年ご挨拶

令和5年1月1日
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1.はじめに
 皆様、令和5年、西暦2023年、明けましておめでとうございます。
 私は、昨年の新年挨拶に於いて、一昨年2021年を振り返り、政治の不安定、新型コロナ、自然災害という三重苦を感じさせられた年であったと述べました。
 これに比し、昨年2022年を総括すれば、新型コロナ禍がネパールに於いてはなんとか一段落し、通常の経済活動や人的交流が再開し始めた年であったと言うことができると思います。
 そして、日・ネパール関係では、留学生交流120周年という記念の年でした。
 
2.2022年
 コロナ禍に於いて自粛を余儀なくされていた各種行事、例えば日本人会に関連する商工部会十日会、補習授業校での対面授業や運動会、年末の忘年会なども開催の運びとなりました。困難な情勢に耐えて来られた関係者の方々のご努力を高く評価致します。日本へのネパール人渡航も再開され、これに伴い日本企業等からのネパール人材への関心の高まりも感じられました。
 私自身も、着任以来制約を感じつつも最低限の責務を果たすべくテレワーク中心で行っていた外交関係の活動について、ようやくネパール政府要人や外交団と対面で協議し、日ネパール間の各種交流行事等に参加することが出来るようになり、改めて実際に人と会って話合いをすることの重要性を実感致しました。
 留学生交流120周年に関しては、5月の記念行事をはじめとする各種のイベント、日本との交流を体現するネパール側各種団体との交流を通じ、二国間の長く親密な関係、数多の心温まるエピソードや物語に触れることが出来たのは、個人的にも感慨深い経験でした。様々なご協力を頂いた全ての皆様にこの場を借りて深甚なる謝意を申し上げます。
また、昨年はネパールにとり選挙の年でもありました。
 5月の地方選挙、そして11月の連邦下院・州議会選挙が概ね民主的かつ平和裏に挙行されたことは、この国に於ける民主主義の進展を内外に示すものであり、意義深いことであったと考えます。11月の選挙時には、他国と比して格段にハイレベルとなる武井外務副大臣率いる選挙監視団が来訪し、ネパール側からも高く評価されました。
 
3.2023年
 さて本年ですが、一本調子に良くなるだろうと申し上げることは楽観的に過ぎるでしょう。引き続き種々の課題や困難はあって当然です。
 新型コロナはネパールに於いては一段落しているとは言え、人的交流が再開した日本、韓国、あるいは中国等での流行に警戒する声も聞かれます。
 選挙の年は本年2月と目される大統領選で区切りがつきますが、選挙結果を受けて新たな政治体制がどうなるのかは、新たな首相の下に於ける政権体制、選挙の特徴のひとつでもあった既存勢力と新興勢力との力関係も含め引き続き注視していく必要があります。それに伴い、当国に於けるガバナンス、各種政策や規制の現場における運用がどうなっていくのかも引き続き課題でありましょう。
 自然災害は決して無くなることはなく、むしろ地球全体で影響は甚大化する方向にあります。SDGsの開発課題は17目標中、おそらく14番目(海洋資源)を除くほぼ全てで引き続き努力が必要でしょう。特に第13番・気候変動は、環境や衛生の問題と相まってネパールにとり深刻な影響をもたらしかねない、国際社会全体で取り組むべき大きな課題です。
 他方、昨年の新年挨拶でも申し述べましたが、ネパールの進展への努力については、これを長い目で見ることが重要と認識しています。10年前の当国を知る人は、電力等のインフラや情報通信環境は様変わりだと口をそろえます。王制崩壊から動乱の時期や大地震を経て、新憲法の下で民意に基づく選挙により政権選択をするに至っている、いわば通常なら百年単位かかるような構造的社会経済変革を数十年で実践し、多民族国家が民主主義の下で前進を模索しているのです。国際社会はこれを支援すべきと考えますし、当国に於いて様々な取り組みに努力されている皆様に敬意を表したく存じます。
 
4.良い年になりますよう
 本年は3年ぶりに大使公邸にて新年会、天皇誕生日レセプションを予定しています。
 今年は癸卯(みずのとう)。癸は十干の最後、卯は兎。すなわち癸卯は、次の生命を育む準備が完了した状態であり、これまでの努力が実を結び勢いよく成長し飛躍するような年になると言われます。
 本年が皆様にとって、厳冬が去り希望が芽吹く春が訪れる良い年になりますことをお祈り申し上げます。
 
2023年1月1日
ネパール国駐箚特命全権大使
菊田  豊

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