令和6年 大使の新年ご挨拶

令和6年1月1日
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1.はじめに
 皆様、令和6年、西暦2024年、明けましておめでとうございます。
 昨年の出来事を振り返る時、私としては一昨年12月26日の出来事から説き起こさざるを得ません。この日、それまでのデウバ前首相に替わりダハル「プラチャンダ」新首相が誕生しました。それまでデウバ政権との連立下にいたダハル首相ですが、オリ元首相他との連立政権に舵を切りました。しかし、それからわずか2ヶ月後には再びデウバ前首相他との連立に体制が組み変わります。そして3月13日には日本とも縁の深いポーデル新大統領が就任しました。
 こうした目まぐるしい変動を経て発足した新たな政治体制は、ネパール長年の課題である、連邦制の実質的進展、包括和平の実現などと同時に、LDC 卒業、気候変動への対応など将来へ向けた多くの喫緊の課題に直面しています。そうした課題への取組みぶりが、ネパール一般国民の目にどのように映っているのか、興味深いところです。
 
2.2023年
 私としては、昨年は3年ぶりの新年賀詞交換会、天皇誕生日祝賀レセプション、叙勲や外務大臣表彰伝達式など日本とネパールとの友好関係に関連する諸行事を開催することが出来、喜ばしく感じております。在ネパール日本人会関連行事なども執り行われ、新型コロナ禍の後遺症他による課題が全て払拭された訳ではないものの、皆様方のご努力により徐々に日常が戻って来たと言えることは明るい動きだったと思います。
 政府ベースでは、2015年大震災以来の274校に及ぶ緊急学校復興事業が完了し、トンネル案件で避難抗の貫通にこぎ着けるなど日本によるネパールへの協力案件の象徴となる進展も見られました。草の根無償資金協力案件で、ダン郡ゴラヒやピュータン郡ピュータン市などネパールの様々な地方へ実際に足を運び、人々と交流出来たのは、自分自身にとっても楽しく貴重な体験となりました。
 目を日本に転じますと、在日ネパール人のプレゼンスが益々増大しています。一般論として二国間の人的交流が緊密化することは喜ばしく、少子高齢化の日本社会を支える人材として日本側の関心の高まりも感じます。その上で私としては、ネパールの方々が日本に於いて幸せに暮らすことが出来、ひいては両国の発展・繁栄に繋がることを祈ります。他方、日本からネパールへの渡航者数は、新型コロナ後の他国からの渡航者の回復振りに比してまだもう一歩との感が致しますが、それでも複数の邦人保護案件が生じました。渡航に際しては、万が一の事態が生じ得る可能性は常にあるとの認識の下に、周到な準備を心がけて頂きたく存じます。同時に、ネパール側には、航空安全性や利便性の向上を期待したいところです。

3.2024年
 2023年は世界の各地に於いて悲惨な紛争や自然災害の激甚化が見られた激動の年でした。加えて本年は選挙イヤーです。インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカといった周辺国、ロシア、南アフリカ、インドネシア、台湾、韓国、メキシコ、米国他様々な国や地域で大きな選挙が予定されており、その結果、国際関係も大きく変動する可能性があります。
 日本もネパールもそれぞれに多くの課題があることはご案内の通りです。そして日・ネパール二国間関係に於いても、日本の対ネパール協力案件につき様々な困難を克服しつつ実施に尽力しているのが実情です。日本国民の善意が、どうか持続可能な実効性あるものとして実現して欲しいと願わずにはいられません。本年は、こうした課題がひとつひとつ解決され、更なる前進の年になって欲しいと切に願っています。

4.甲辰
本年は甲辰(きのえたつ)。物事の始まりと大きな成長が期待される年です。皆様のもとに、暖かな光があまねく降り注ぎ、これまで努力されてきたことが実を結んで成就する年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。
 
2024年1月1日
ネパール国駐箚特命全権大使
菊田豊

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